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仮想オフィスのデータが語る、従業員エンゲージメントとは、どのように醸成されるのか

# よりよい働き方のために

はじめに

従業員エンゲージメントを向上させるには、どのような施策が効果的でしょうか。

労働人口の減少、人材不足を抱える日本の社会において、従業員エンゲージメントは大きな課題。従業員エンゲージメント向上という課題を与えられて、何から手を付ければいいだろうかと、頭を悩ませている方はけっこう多いのかもしれません。

私たちも皆さんと同じように従業員エンゲージメント向上に真摯に向き合っています。その取り組みの中で、仮想オフィスが従業員エンゲージメントに貢献しているのではないかという仮説が、利用者アンケートから見えてきました。

本コラムでは、仮想オフィスサービスの導入から1年間で合計3回実施した利用者アンケートの中から、従業員エンゲージメントに関わるいくつかのデータをご紹介します。

さらに仮想オフィスサービスの具体的な活用方法などもご紹介しますので、仮想オフィスサービスをすでに導入されている皆様も、導入を検討中の皆様も、ぜひヒントとしてご利用ください。

導入から3ヵ月後、半年後、1年後で利用傾向を調査

アンケートを実施したのは、仮想オフィスサービスを導入してから3ヵ月後、半年後、1年後の全3回。途中で新たな機能追加も実施しました。アンケートの対象は、約3,300名の全利用者です。時系列を整理すると以下の流れになります。

2021年 10月 仮想オフィスサービス導入
12月初旬 第1回 利用者アンケート調査(約3ヵ月後)※1
12月下旬 新機能の追加
2022年 2月末 第2回 利用者アンケート調査(約半年後)※2
9月末 第3回 利用者アンケート調査(約1年後)※3
  • ※1 第1回調査期間:2021年12月7日〜12月17日/回答者数:3,276名(回答率95%)
  • ※2 第2回調査期間:2022年2月21日〜3月4日/回答者数:3,247名(回答率94%)
  • ※3 第3回調査期間:2022年9月20日〜10月7日/回答者数:3,237名(回答率92%)

導入初期は少しずつ。1年経って活用は浸透する

最初のデータは「利用頻度の変化」です。部門別の数字もご紹介します。

導入から約3ヵ月が経った2021年12月の第1回アンケートでは、「ほぼ毎日使う」という利用者は全体で39%。半数以下に留まりましたが、さらに約3ヵ月が経った第2回アンケートでは69%と一気に上昇しました。

利用頻度の推移(部門別)

第1回目のアンケート実施直後に新たな機能を追加したので、その影響も考えられるでしょう。導入1年後には、さらに利用者数は増加し、ツールとして仮想オフィスが定着しつつある傾向が見えます。

使いやすさは業務内容にも影響されるのでしょう。部門によって利用頻度に差はありますが、ほぼ毎日利用する人が90%を超える財務や人事などのコーポレート部門では、業務内容になじみやすく、もっと想像を膨らませるなら業務の効率アップを実感されている方も少なからずいるかもしれません。

自宅だけでなく、本社オフィスでも活用頻度が高い

もう1つ興味深いのは、利用場所です。

「仮想オフィス」といえば、在宅勤務者のために開発されたツールというイメージがあるかもしれません。実際に当社でも、利用者数が増えてきた導入半年後の第2回アンケートでは、「ほぼ毎日」使う利用者の主な勤務場所は、自宅がトップで75%。2位以下に6ポイント以上の差をつけています。

しかしその後、定着しはじめたとみられる第3回アンケートでは、本社オフィスが、自宅作業を1%ですが上回っています。

利用頻度の推移(主たる勤務場所別)
※グラフ内の顧客先とは、お客さま先のオフィスに常駐している従業員のこと。

もちろん同じチームや課に在宅勤務者がいれば、リアルに出勤している従業員も仮想オフィスを使わざるを得ないケースがあるでしょう。チーム全体の動きを知るために、必要にかられて毎日利用しているのかもしれません。

着目したいのは、第1回アンケートの直後に導入した新たな機能の影響です。追加したのは「チームチャット機能」と「チーム掲示板機能」の2つでした。チームコミュニケーションという視点で、ある仮説が成り立つのではないかと気付いたのです。

仮想オフィスでチームの一体感を感じられるようになる

「チームの一体感を感じるようになったか」という質問に対して「よくなった」と回答した比率は、第1回、第2回をとおして顕著な増加はみえませんでした。むしろチームチャット・掲示板機能を追加して約3ヵ月が経っていた第2回においては、本部長以上の職位では大きく減少してしまいました。

チームの一体感を感じるようになったか

しかし「一体感の醸成に有効だと思う機能」という設問では、追加された機能が2つとも上位に現れたのです。

一体感の醸成に有効だと思う機能 第2回アンケート時(2022年2月)

第2回アンケート当時は、まだ「チームの一体感」まで感じていなくても、チームチャットや掲示板は非常に頻繁に使われていたと想像できます。その半年後の第3回アンケートでは、すべての職位について「チームの一体感がよくなった」と感じる利用者が大きく増えたからです。チームの一体感とは、一朝一夕でよくなるものではないので、使い続けるうちにチームの一体感を、肌で感じる人が次第に増えていったともいえるのではないでしょうか。

特に、本部長以上、部長、課長クラスでは、10ポイント以上の上昇。マネジメント層において、より強く実感されていることがわかりました。チームコミュニケーションに関する機能は、仮想オフィスというツールにおいて、非常に効果を発揮しやすく相性がいいのかもしれないと、私たちは感じるようになりました。

チームコミュニケーションが持つ、従業員エンゲージメントへの影響力

冒頭でお話したように、私たちは「従業員エンゲージメントの向上」と「心理的安全性の確保」という2つの課題に徹底的に向き合っています。

従業員エンゲージメントという言葉は、主語は「従業員」。しかし向上させるには「従業員が何をするか」ではなく、まず「会社が従業員のために何をするか」から始まるのではないか。だから、まずは会社が主語となり、行動することが先決ではないか――。

そう考え取り組んだのが、コラム「従業員エンゲージメントと心理的安全性のために続けてきた、従業員との対話とは(前編)(後編)」で詳しくご紹介している、会社と従業員の対話です。

会社と従業員の対話が活発になると、よいコミュニケーションが生まれます。会社と従業員のよいコミュニケーションの土台上で、従業員同士の対話が活性化され、さらによいコミュニケーションが生まれます。それが職場の働きやすさや会社への信頼として醸成され、従業員エンゲージメントが向上していく。

これが私たちの従業員エンゲージメントを向上させるための、核となる考え。この想いに根ざした施策などを積み重ね、実際に当社の従業員エンゲージメントも上昇してきました。

もともと仮想オフィス自体も、従業員エンゲージメントに貢献しているとは考えていましたが、特に上記の視点で振り返ると、「チームコミュニケーションの醸成」という要素が、従業員エンゲージメント向上の一助になっていたのではないかと気付いたのです。

まだまだある具体的な活用方法のヒント

「ほぼ毎日」利用する人数が増えてきた第3回アンケートでは、具体的な活用法も集めました。一部を抜粋します。直接、業務に関係のあるものから、職場の働きやすい空気をつくったりプライベートな交流に利用したりとさまざまな活用がされています。利用者の一人ひとりが、積極的に楽しみながら活用している姿が、回答からは垣間みられました。

仮想オフィスの具体的な活用例(自由回答)

「当日の早退予定や翌日の年休、遅参予定などを吹き出しコメントに書いてリマインドのために使っている。いいねがつくと安心して早退したり休んだりできる」
「年休予定をチーム掲示板に投稿しチームで共有しつつ、年休取得しやすい雰囲気を醸成している」
「始業、終業での挨拶に使っている」
「作業TODOや作業期限の共有にチームボードを使っている」
「eラーニング受講などの会社依頼のタスクを掲示板へ登録し、アナウンスしている」
「Myボードのメモ帳が複数あるので、業務ごとにTODOを記載している」
「EXCELの便利な関数を仮想オフィスの吹き出しコメントに投稿したところ、それをあるメンバーが拾って関数の詳細を調査、ナレッジとしてチーム内に発表しチーム内の作業効率向上に役立った」
「チームボードの掲示板で情報共有している。連絡事項や動画のリンクなど」
「オンライン飲み会の案内を掲示板に掲載した」
「プロ野球好きというチームを作成してコミュニケーションをとっている」

導入済みの皆様も、導入を検討中の皆様も、何かヒントになれば嬉しいです。

編集後記

仮想オフィス開発には、業務内容にかかわらず誰もが、同じようにわくわくしながら働ける会社にしたいという想いが出発点にありました。

今でこそ「従業員エンゲージメントを高めるには」という視点で、さらなる機能の開発や改善に取り組んでいますが、スタート時には「従業員エンゲージメント」というキーワードは、まだ言語化されていませんでした。

しかし、利用者のフィードバックを積極的に取り入れ、ツールとして成長していくなかで、さまざまな可能性が見えてきたのです。従業員エンゲージメントに貢献できるサービスではないか、と。

日本の働き方を、本気で変えていく。誰もが、わくわくと働ける社会へ。原動力は、仮想オフィスを使った皆様がくださるフィードバック。さらなるわくわくを生み出そうと、私たちは今も開発の真っ只中にいます。